第3回のインタビューテーマは、「未来の決定について」聞いてみます。
新居浜市にある株式会社三好鉄工所 松島悠大さんにお話しを伺いました。
Q:高専時代はどんな職業になりたいとか思っていましたか?
まったく具体的な職業は考えていませんでした。
入学した当初は、ただ漠然と「工業に携わる職業に就くのだろう」と思っていた程度です。
とにかく早く経済的に自立し、自分の力で生きていきたいという気持ちが一番強かったように思います。
Q:今だからこそ思う、高専に入って良かったと思うエピソードを教えて下さい。
高専に入って良かったと感じる最大の理由は、素晴らしい人たちとの出会いです。
その中でも、軽音楽部で共に活動したHとの経験は特に印象的でした。
Hは大胆な発想力と行動力を兼ね備え、部をより良い方向へ導く数々のアイデアを生み出しました。
僕はその隣で実行役として支える立場でしたが、次々と新しい景色を見せてくれるHの存在は、
当時の僕にとって非常に刺激的でした。
軽音楽部の活動を通じて、部の運営方針を改善したり、
大規模なイベントを成功させたりと、僕たちは多くの挑戦を経験しました。
これらの成功は、自由で柔軟な校風と、
周囲からの大らかなサポートがあったからこそ実現できたものだと思います。
Hだけでなく、高専という環境で出会った多くの人たちが、僕の視野を広げ、挑戦する勇気を与えてくれました。
こうした日々を振り返ると、高専に入学して得たのは知識や技術だけではなく、
多くの出会いによって自分自身を成長させる機会だったと感じます。
Hとの思い出もその一部であり、今の僕を形作る重要な要素です。
Q:今だから言える高専時代の自分にやっておけば良かったと言えることは?
特に後悔しているのは、お金の勉強と暗号通貨への投資です。
当時、1ビットコインが5万円程度だった頃、友達が購入していて勧められたのを今でも覚えています。
当時は深く理解してなかったし、種銭もなかったので流してしまいましたが、
今頃、彼がどうなっているのか想像すると、少し悔しい気持ちになります。
20代前半はお金について何も知らないまま行動した結果、何度も失敗しました。
パチンコ、競馬、FX、デイトレード、バイナリーオプション、ネットカジノ…
何人の諭吉が旅立って行ったことでしょう。
若い時から勉強して、己と投資をもっと理解していれば未来に対する考え方も
もっと広がったのではないかと思います。
栄一にはずっと僕のそばにいてもらいたいものですね。
あと、いろんな業種でアルバイトをしてみたかったです。
特に夜の街界隈の仕事など、普段の生活では触れることの少ない独特な業界で働いてみたかったですね。
きっと視野が広がったでしょう。
同じように、他の高校や高専の人たちともっと積極的に交流しておけば良かったとも思います。
今ではSNSが発達しているので簡単にできることですが、
当時はそのハードルが高く、行動に移せなかったことが少し心残りです。
こうした小さな「やっておけば良かった」ことを振り返ると、
高専時代は自由に挑戦できる時間だったのだと改めて気づきます。
その自由をもう少し有効に使えていたら今とは違う何かを得られていたかもしれないですが、
過去の経験をこうして振り返ることで、今後の選択肢をより豊かにできると思うしかありませんね。
Q:高専で学んだ、あるいは体験が業務に役立ったエピソードがあれば教えてください。
Y先生から教わった「公式は覚えなくていい。どこに書いてあるか知っていればそれで良い」
という考え方は、今でも常に役立っています。
これは単に暗記からの解放を意味するだけではなく、
本質的には「目的を常に見失わない」という姿勢を教えてくれたものだと思います。
公式や情報をただ丸暗記するのではなく、
「必要なときにどこで手に入れるか」を知っていれば十分という発想は、情報過多な現代社会で非常に有効です。
この教えは、特に分業が進んだサラリーマン生活の中で大いに役立っています。
日々の業務は多岐にわたり、単純な作業をこなしていると、
その作業の目的や本質を見失うことがよくあります。
しかし恩師の教えのおかげで、どんなに細かいタスクであっても
「そもそも何のためにこれをしているのか」という問いを常に持つことができています。
この視点があることで、ただの作業者として埋もれることなく、
全体を見通した効率的な動きが取れるようになっているんじゃないかなと思います。
Q:これからどんな仕事をしていきたいですか?
若者がイキイキと働ける環境を作る仕事をしたいと考えています。
弊社の企業理念は「当社に関わるすべての人の幸せを通じて社会に貢献する」です。
その実現のためには、まず私たち自身が幸せであることが不可欠です。
働いている人々が幸せを感じられる環境なくして、周囲に幸せを広げることは難しいでしょう。
専門的な知識やスキルを蓄えることは重要ですが、それを活かして能動的に動かなければ宝の持ち腐れです。
一方で、往々にして組織は放っておくと強い者による制約が弱い者を支配する構図になりがちです。
制約を受けすぎると、人は能動的に動けません。
立場的に弱い者が最大限の力を発揮できる環境を整えることは、
組織の力を底上げする最良の方法の一つだと考えています。
私一人が自分のスキルを伸ばすことよりも組織全体の力を引き出すことの方が、
はるかに大きな効果をもたらすと信じています。
立場の弱い人の話を聞き、どうすれば全員が幸せになれるかを考えることには自信があります。
この「得意」を生かして、私が所属する組織のパフォーマンスを向上させる仕事をしていきたい。
みんなの「得意」が輝く部署であってほしい。
それが私の貢献であり祈りなのです。
Q:今後伸ばしたいスキルは?
今後伸ばしていきたい力は、大きく分けて「伝える力」と「共有する力」の2つです。
まず、伝える力を伸ばすために
「わかりやすく話すスキル」と「人の心を動かすスキル」を学ぼうと思います。
どんなに良いアイデアやプランを持っていても、
それを相手に理解してもらい共感してもらわなければ前に進めることはできません。
そして心が動かないと人は行動に移しません。
普通に生きているだけじゃなかなか身につきませんでした。
今後は専門的な教育を受けたいですね。
次に、共有する力を伸ばすために「仕事を明確に伝え、任せるスキル」も身に着けたいです。
これらは、チームで仕事を進めるうえで必要不可欠です。
自分一人の力では早々に限界が来ますが、
仕事を他者に任せるためには自分がやっていることを正確に伝える力が求められます。
「言語化して共有する」という行為は、
各々が自身の役割を理解し同じ方向を向くための鍵になると感じています。
これらのスキルを磨くことで、チーム全体がより効率的に、
そして充実感を持って仕事に取り組める環境づくりに貢献できれば嬉しいですね。
Q:高専生だった自分へメッセージがあればお願いします。
「迷ったらやれ。ビビるな、日和るな、もっとやれ」